みえんからおらんというのがまちがいのもとじゃがナby『のんのんばあとオレ』
水木しげるシリーズ第2弾です。
前回の『総員玉砕せよ!』が予想以上に素晴らしかった(失礼)のですぐに読んでしまいました。
今回はその勢いのまま『のんのんばあとオレ』ですが、読み始めてちょっとズッコケてしまいそうになりました。
物語が紙芝居みたいで展開がとてもゆっくりなのです。
最後まで読めるか自信がないなあと思いながら読みはじめたのですが、その心配は杞憂に終わりました。
ちょっと読むとその面白さに夢中になってしまいました。
登場人物がみんなとても優しいのです。愛情に溢れているのです。
そして漫画の中に出てくる人達は総じて貧乏です。しかし貧乏だという事についてなんとも思っていません。
例えば今だったら、貯金がないと心配だ、とか家が貧乏だから格好悪いとか思うような気がするのですが、『のんのんばあとオレ』の世界では貧乏という事に対して劣等感のようなものがありません。
貧乏なのが当たり前、それをことさらどうこう言う方がおかしいという感じです。
昭和6年頃が舞台なのですが、当時の常識はそんな感じだったのかもしれません。
のんのんばあは連れ合いのおじいさんが無くなったことで、しげーさんの家で住み込みの家政婦さんとして働く事になります。
こののんのんばあが誰に対しても底抜けに優しく愛情あふれるおばあさんなのですが、霊的な事についても知識の豊富な人です。
幼いしげーさんの面倒をみながら同時に霊的な事も教えるといった感じです。
しげーさんのお母さんですが何かというと「生家は苗字帯刀御免の家計で、家紋だってお殿様の裏門をいただき倉が三つもあった旧家だったんだけんね」
という人なのですが、とても優しい人です。
しげーさんのお父さんですが銀行勤めで一見まじめな人かと思いますが全然まじめではありません。
趣味が高じて地元に映画館を作りたいと言い出し、奥さんの大反対にあうのですが、結局作ってしまいます。
物語はしげーさんを中心にのんのんばあ、しげーさんのご両親、兄弟、友達たちとの日常が微笑ましく描かれています。
そんな中でちょっとしたラブストーリーがあります。
『のんのんばあとオレ』という漫画の中でしげーさんは3人の女の子に恋をしますがいずれも成就しません。
一人目の女の子、松ちゃんですが、ハシカであっけなく亡くなります。
二人目の女の子、千草、病気で東京から転地療養に来ています。しげーさんと心を通わせるのですが亡くなってしまいます。
三人目の女の子、吉川美和、神戸から引っ越してきました。しげーさんと同じように「目に見えないもの」が見えます。なのでしげーさんとは仲良しになります。
しかし結局、芸者の置屋に売られていきます。
しげーさんの恋は結局実ることはありません。
そういう時代だったんだな、と思うしかありません。
『のんのんばあとオレ』ですがとても考えさせられる文章が沢山出てきて、豊かな気持ちになります。
何度も手に取りたくなる一冊でした。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。